心の棘が抜けた瞬間、薬八幡神社宮司さんの優しさ(源九郎稲荷神社復興物語 第話55話)

源九郎稲荷神社 夕涼み会
今回の登場人物
源九郎とよ
源九郎とよ
源九郎とよ(本名土井美苗):復興活動物語のボランティアチームスタッフ代表。この当時は警察官をしておりました。当時は本名を隠してペンネームの「源九郎とよ」で活躍しておりました。
中川おじちゃん
中川おじちゃん
中川のおじちゃん:源九郎稲荷神社の管理人であり、語り部として有名です。復興活動のボス的存在。柔軟な思考を持ち、古いものを大切しながらも新しいものも取り入れるすばらしい感性の持ち主。
伊藤君
伊藤君
伊藤君:夕涼み会のリーダー。企画段階から中心となって夕涼み会を作り上げた人物。若手スタッフからは絶大な信頼を得ている頼もしい存在
薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社のおばあちゃん宮司さん:以前、源九郎稲荷神社にお花を植えてはいけないと注意しに来られた方。でもそれには理由があり、本当はとても親切で優しい宮司さん

 

前回は、夕涼み会の打ち合わせ会議の席で、住民から思わぬ反対意見が出たお話をさせていただきました。

 

けれど、ルーキー伊藤君の地元を思う熱い郷土愛に打たれた住民方は、全面的に協力してくださることになりました。

さて、いよいよ夕涼み会の当日となりました

 

源九郎稲荷神社の夕涼み会は、祭りの賑わいだけでなく、人と人との誤解が解け、優しさに包まれた特別な一日となりました。

 

薬八幡宮のおばあちゃん宮司さんがお手伝いにきてくださいました

 

源九郎稲荷神社「夕涼み会」1日目の当日朝・・・

いよいよ、本番の日がやってきました。

 

朝から、中川のおじちゃん、伊藤くん、そして中川さんの知り合いのKさんとで、テントを立てています。

私は、中川のおばちゃんと神社のお掃除をしていました。

 

ちょうど、鳥居付近の落ち葉を掻き集めて袋に入れているときに、隣の神社である「薬園八幡宮」の宮司さんが来られました。

薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
神社にお金がないと聞いたので、少しばかりですがお供えを持ってきました。

と言って、お金を寄付してくださいました。

 

この宮司さんは、女性の宮司さんなのですが、年齢はすでに80歳を超えているのではないかと思います。

とても上品な方で、源九郎稲荷神社のことを色々と気遣ってくださるのですが、実は、この方と私のとの間で、今年の春に気まずい出来事があったのです。

 

🌸「叱られた理由」には涙があった

ある春の日。
源九郎稲荷神社の境内に咲いたたくさんの色とりどりの花々。


神社をより美しく──そんな思いで、とよと中川のおばちゃんは夢中で植えていました。

ところが突然、隣の 薬八幡宮のおばあちゃん宮司さん から、

薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
せっかく植えてくれはったんだけど、神社に色花を植えてはいけないのですよ。悪いけれど抜いてくれますか

と厳しい言葉が。

 

そんなしきたりなど全然知らないし、まずしきたりなどお構いなしの私と中川のおばちゃん・・

いきなりそんなことを言われても納得がいきません。

 

源九郎とよ
源九郎とよ
でも・・・とても綺麗ですが・・

 

ささやかな抵抗をしましたが・・・

 

薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
綺麗とかいう問題ではありません

 

叱られてしまいました・・・。

 

落ち込む私・・・。

 

中川のおじちゃんは、

中川おじちゃん
中川おじちゃん
抜かなくてもいい

と言ってくれたので・・・数日はそのままにしておいたのですが・・

宮司さんに叱られたのがショックだったのか、そのお花たちは数日後には全部枯れてしまいました。

 

納得できず、心にしこりが残ったまま月日が流れました。

 

🎐 そして迎えた「夕涼み会」当日

その後、中川のおばちゃんは、お構いなしに綺麗な色花を植えて育てていましたが、それ以降宮司さんが来れられることはありませんでした。

 

祭りの準備が始まった朝。

なんとその宮司さんが、神社を訪れてくださいました。

 

源九郎とよ
源九郎とよ
なんか苦手だな・・・あの宮司さん。

 

源九郎とよは、そんな思いで宮司さんとはできるだけ顔を合わせないようにしていました。

 

すると、宮司さんの方から源九郎とよのところに近寄ってこられたのです。

薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
いつもご苦労さまやね。
ありがとうね

 

そう声を掛けてくださいました。

 

源九郎とよは、顔を合わせないようにした自分が恥ずかしくなりました。

 

 

宮司さんは更に

薬八幡神社宮司さん
薬八幡神社宮司さん
この前はごめんなさいね。
お花を抜きなさいなんて言って。

せっかく神社を綺麗にしようとして植えてくれたのにね

 

と言ってくださいました。

 

その言葉を聞いた瞬間、胸につかえていた「苦手意識」がすっと消えました。

そして、宮司さんが、あれ以降ずっとこのことを気になさっていたことがわかりました。

 

 

🐍「叱った本当の理由」

後からわかったことですが、どうもお花の大嫌いな例の蛇女と名乗る信者さんが、知り合いであるこの宮司さんに、神社の境内に花を植えないように注意をしてほしいと頼んだようなのです。

 

それで、この宮司さんは嫌われ役を買って、私達に注意をしに来られたようなのです。

でも、私達が、ずっと神社の掃除をして綺麗にしてきたことを知っておられたので、とても心が痛んでおられたようです。

 

本当はとても優しい人だったのです。

だからこそ、心を痛めながら注意しに来られたのでした。

 

源九郎とよは、この宮司さんの一言で、心の棘が抜けたようで、涙が出そうになりました。

 

💐 心の棘が抜けた瞬間

その後、おばあちゃん宮司さんは、炎天下の中、客席の椅子を拭き、並べ、黙ってお手伝いしてくださいました。

誰も気づかないところで、静かに、温かく。

「見たことのなかった優しい表情」

神社には、神様だけでなく、優しい人の思いも宿っている。

夕涼み会は、そんな「人の心」が照らし出されたお祭りになりました。

 

📌 第56話|涙の理由と、神社を支える人たち

 

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(神社の社務所建設の夢へつづく)