「入院中の親友美里が一日でも早く食べ物を口にすることができますように」というお願いを、すぐに叶えてくださった源九郎稲荷神社の神様に、何かの形でお礼をしたいと考えた源九郎とよは、あまりにも荒廃していた神社の境内のお掃除をすることを思いつきました。
そして、仕事が休みの時には神社に足を運び、まずはひとりで境内の落ち葉集めから始めました。
すると、そこに現れたのが、前職のおじいちゃん宮司さんです。
最初は、境内でごそごそと一人で掃除をしているとよのことを不審に思ったおじいちゃん宮司さんですが、日を重ねるたびに二人は次第に打ち解けていきました。
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とよの良き相談者になったおじいちゃん宮司さん
おじいちゃん宮司さんとすっかり打ち解けたとよは、いろいろと話を伺いました。
宮司さんは、吉野に住んでいる通い宮司さんであり、本業は材木店の社長さんでした。
そのため、週に1回、2回程しか源九郎さんには来ることができない人でした。
道理で、いつ来ても会わなかったわけです。
しかしその後は、とよが神社に行く告げた日には必ず神社に来てくださるようになり
と心配してくれるようになりました。
とよとおじいちゃん宮司さんはすっかりと打ち解けて、美里のこと以外にもいろんな話をするようになりました。
そんな中、とよは仕事が早く終わった日は、美里のもとへ行きました。
自分の余命を知ってしまった親友の美里
ある日のことでした。
とよは、その日も美里のお見舞いに行きました。
美里は、いつも必ず笑顔で迎えてくれます。
けれど・・・・その日は、その笑顔が曇っていました。
何かあったと思いましたが、とよは自分から
「どうしたの?」
とは、とても聞けずにいました。おおよその予想がついていたからです。
美里の目に、涙が溢れていました。
でも、それは一瞬のことでした・・。
すぐに、いつもの気丈な美里に戻って、
表面の癌細胞は手術で取れたのに、浸潤っていって、中に中に入っていってる癌細胞があったみたい。
そう言って、美里は笑いました・・。
とよは全身が固まりました。
喉がカラカラに渇いて、この場面にどう対応したらいいのか全くわかりませんでした。
何も言葉が見つからない・・。
・・・とにかく、とよはただただ・・美里の傍らに立ち尽くしていました。
とよは、自分の不器用さをこの時ほど恨んだことはありません。
どうしたらいいのか、全くわかりませんでした。
癌と闘うことを選択した美里
言葉を発したのは美里のほうでした。
絶対に死なないから!
絶対に癌なんかに負けないから!
美里の魂が、震えているのを感じました。
魂の叫び・・・。
悔しさと不安と悲しみが、津波のように彼女の体から押し寄せてくるのを感じました。
美里は今、どんな気持ちでいるんだろう・・・。
そのことを考えると、自分という存在の無力さを痛感させられました。
私にはその言葉が精一杯でした。
ただ、絶対に美里の前では泣いてはいけないと思いました。
彼女の苦しみ、不安・・・。
たぶん私には100分の1もわからないと思いました。
そして彼女も・・。
私の前では泣きませんでした・・。
とよと美里は誓いました・・・。
絶対に病気を克服してやるから!!
美里は、いつもの気丈な美里に戻っておりました。
その後、彼女は抗がん剤治療に賭けました。
医者に効果はないかもしれないと言われても、彼女は黙って余命を過ごせるような女性ではありませんでした。
どんなに辛い治療でも、生きる望みが1パーセントでもあるのならと、彼女は戦うことを選びました。
この時の美里の顔・・・。今でも忘れることができません。
そして、心の片隅で、
という悔しい思いが沸き上がって来たのです。
その時、大和郡山八幡宮の宮司の奥さんの言葉が蘇って来ました
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源九郎稲荷神社復興活動に続く「源九郎とよのバンコクスパ経営奮闘記」
それまで勤めていた警察を辞めて、タイ、バンコクで新たな挑戦を始めることになったのです。とよが源九郎稲荷神社復興活動チームから離れて、警察同期生だった親友の助けを得ながら異国タイで奮闘するハチャメチャな様子を綴った物語が「元女性警察官(刑事)コンピがバンコクでスパ経営物語」です。
なんとか成功してお金を貯めて源九郎稲荷神社の社務所を建て替えるのがとよの夢なのですが、新型コロナウィルスのパンデミックもあり、なかなかすんなりとはいかない状態です。
でも、夢をあきらめずにやれるところまで頑張ってみたいと思います。ご興味のある方は、そんな源九郎とよの奮闘状況をご覧ください。
元女性警察官(刑事)コンビのバンコクスパ経営物語