火の神の誕生とイザナミの死(古事記)

次々と神々を生み続けたイザナミは、最後に

火の神カグツチ

を生み落とします。

 

前回のお話はこちら↓

 

 

ところがこの時、燃え盛るその子供によってイザナミは陰部に大火傷を負ってしまいます。

 

 

このとき、病み伏して苦しむイザナギの嘔吐や糞、尿からも神々が生まれましたが、ついにイザナギは亡くなってしまいます。

 

 

イザナキが

「いとしい我が妻よ、お前は一人の子を産んだ代わりに亡くなってしまったのか」

と言って、枕元に腹ばいになってなくと、イザナキの涙からも神が生まれました。

 

 

カグツチは、生まれて直ぐ、

土の神の埴山姫(ハニヤマヒメ

と結婚して、

稚産霊(わうむすひ)

を生みます。

 

稚産霊は、頭の上に蚕と桑、ヘソに五穀がありました。

 

このことは、火と土の神との交わりで生まれた子神の姿に、畑農耕や養蚕の技術の歴史を著したと言われています。

 

 

残されたイザナキは、わが子とはいえ、愛おしい妻を死に至らしめたカグツチに憎悪の念を募らせ、十挙(とつか)の剣を抜くと、怒りに任せてカグツチの首を切り落としてしまいました。

 

剣の先とイザナキの手元から周りの岩に飛び散った血からそれぞれ岩・雷鳴・雷火など三柱の神が生まれました。

 

更に剣の柄にたまった血から二柱の神が生まれカグツチの亡骸からも八柱の神が生まれました

 

これらの神々は、みな山に因んだ神様でした。

 

 

こうして、母を焼いた挙句に、あっという間に命を落としたカグツチですが、この神は

秋葉神社(静岡県周智郡春野町)

愛宕神社(東京都港区)

に、なんと防火の神として祀られているのです。

 

皮肉なことですね

 

 

さて、無くなったイザナミの墓について、古事記では、

出雲国(現在の島根県)と伯伎国(ほうきこく:現在の鳥取県西部)

の境にそびえる

比婆山(ひばやま)

に葬られたと記されています。

 

 

この比婆山の伝承地としては、

現在の鳥取県と広島県の県境に位置する比婆山連峰の中の

比婆山(1240メートル)

とされています。

 

 

一方、日本書紀では、

紀伊国(和歌山県)熊野の有馬村

に葬られたと記されています。

 

その伝承地としては、熊野三山にも近い和歌山県有馬町の

花窟神社(はなのいわやじんじゃ)

と伝えられています。

 

この花窟神社は、日本書紀では、日本最古の神社とされており、

高さ70メートルに達する巨岩がそびえ、その基部にイザナミを祭神として建てられています。

 

 

さて、カグツチの出産でイザナミが命を落とすというこれらの神話からは、火を特別視していた古代の信仰を垣間見ることができます。

さらに、カグツチの死と同時に多くの神が生まれていることからは、火は生命の誕生をも司ると考えられた事実も伺えます。

 

こうして愛する妻を失ったイザナキは大きな悲しみに包まれ、この後、死者が行くという黄泉の国へと妻を連れ戻しに向かうのです。

 

 

余談ですが・・・

カグツチの亡骸から多くの神が生まれたという神話ですが、このような神話のことを

死体化生(したいかしょう)

と呼び、中国にも似たような話があります。

 

盤古(ばんこ)説話です。

 

 

天地ができる以前の、卵の中身のように混沌とした状態から盤古という神が出現しました。

天地を創り上げた後盤古は亡くなり、その死体から万物が生成されたと伝えられています。

 

例えば盤古の

息から風が、

左目からは太陽が、

右目からは月が、

頭と体からは中国の神聖な山である五岳 (泰山など)

が生まれました。

 

 

また、

肉は土に変わり、

体毛は草木になり

骨や歯は金属や石になり

汗は雨になりました。

 

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