五穀の誕生(古事記・日本書紀) 食物の女神オオゲツヒメ(保食神)が生んだ五穀

スサノオが高天原を追放され出雲に辿り着く前、とてもとてもお腹がすいたので、その道すがら

食物の女神オホゲツヒメ

を訪ねて食べ物を求めました。

 

オホゲツヒメは、鼻・口・尻などから食べ物を取り出しては料理しました。

 

 

しかし、その様子を見ていたスサノオは、わざと汚くしているのだと勘違いし、女神を斬り殺してしまいました。

 

 

すると、その体からは、

頭から蚕

両目から稲の種

両耳から粟

鼻から小豆

陰部から麦

尻から大豆

が生まれました。

 

これを高天原から見ていたタカムスヒが採取し、種として地上に授けました。これが五穀の種の誕生とされています。

 

 

女神の死によって命の源の食糧が生まれるのは、

毎年刈られる食物は、翌年には新たに芽吹き、実を結ぶという自然の法則

つまり、秋の刈り入れで生命を絶たれた後に種を残し、また種まきにより復活する穀物の再生産を表しています。

 

 

ちなみに「日本書紀」にも、よく似た逸話が残っています。

 

高天原の天照大神が月夜見尊(つくよみのみこと)に銘じて、地上の食物の神

保食神(うけもちのかみ)

の様子を見に行かせました。

 

 

月夜見尊は、古事記におけるオホゲツカミのような保食神に出会います。

ところが保食神が口から食べ物を出して、自分をもてなそうとするのを見て思わず殺してしまいます。

 

そして死体から穀物が生まれ、ここまでは古事記とほとんど変わらない話なのですが、「日本書紀」では、保食神の殺害をきっかけに天照大神と月夜見尊の関係が悪化し、

月と太陽は決して顔を合わせなくなった

といいます。

 

 

もしも、オホゲツヒメや保食神の死がなければ、地上に穀物が実ることことはありませんでした。

生き抜くために、時には他者を犠牲にしなければならない残酷な現実が、この逸話には含まれているような気がします。

 

 

このように、殺された物の死体の各部から栽培食物、とくに球根類が生じるという逸話は東南アジアから太平洋、中南米、アフリカに広く分布しています。

 

 

イモ類を切断して地中に埋めると、再生し食糧が得られることが背景にあります。

オホゲツヒメから生じるのが穀物であるのは、日本では穀物が主に栽培されていたためであると考えられます。

 

そこで・・・・

古代人の食事って興味ありませんか?

 

古事記・日本書紀の他風土記などの記述や出土品などから、古代人の食事がわかります。

古代人は、

稲、粟、小豆、麦、大豆

の五穀の他、

・桃(不老長寿の仙果。「古事記」では黄泉の国から逃れる伊弉諾を助ける)

・ときじくのかくの木の実(垂仁天皇の記述に登場する不老不死の霊果)

・酒(「奇し」と呼ばれ、アルコールが人格を変えてしまう作用を持っているところから命名)

・猪鹿(当時の人間の食糧となる野生動物の総称)

・蠣貝(縄文時代によく出土し、蛤に次いでよく食された)

・しび(マグロのこと。「風土記」などによく記述が見られる)

等を食していたようです。

 

 

さて、いよいよ古事記は第二章「神々の始動」へと移っていきます。

 

主人公は、皆様もよく名前を聞く

大国主命、瓊瓊杵尊、神武天皇

等です。

 

 

稲羽の白兎や海幸彦・山幸彦などの神話も出てきますよ!!

お楽しみに!