さてさて・・・
アマテラスは日の神(太陽神)であったことから、スサノオの暴力を恐れて岩屋に隠れてしまい、その戸をしっかりと閉めてしまったため、世の中はにわかに真っ暗になってしまいました。
世の中を闇が支配するようになると、やがて悪霊たちの活動が活発になりました。
悪霊たちの騒ぐ声は夏の蝿のように世の中に満ちて、あらゆる禍が一斉に起こったのです・・・・・
アマテラスが天の岩戸に籠もってしまったことにより、高天原と葦原中つ国は真っ暗になってしまいました。
これは、天皇家の尊厳を如実に表しています。
皇祖神であるアマテラスが隠れることにより、天皇の怒りを買えば、天の恵みが失われてしまうということを教える逸話といわれています。
さて、このままでは、世界が終わってしまうと考えた高天原の神々は、天の安河原に集まり、知恵を絞りあうことになりました。
そして、
タカミムスヒの子であるオモイカネ(予見の神)
に計略を考えさせました。
オモイカネが考えた計略とは、
「天の岩戸の前で盛大に祭りを行い、アマテラスに出てきてもらおう」
というものでした。
それで、まず夜明けに鳴く、常世の
長鳴鳥(ながなきどり:永遠の国に住む鶏)
を集めて鳴かせました。
これは陽の気を呼び寄せるための準備です。
次に
河の上流にある堅い石を取り、天の金山から鉄を取って、
鍛冶屋のママツマラ(立派な男根を持つ神)
を捜し出し、
イシコリドメ(石を固める女神)
に命じて
鏡(八咫鏡 :やたのかがみ:三種の神器のひとつ)
を作らせました。
次に
タマノオヤ(玉祖(タマオヤ)の連(ムラジ)の祖先)
に命じて
500個の八尺の勾玉を緒に貫いた玉飾り(八尺瓊勾玉 ・やさかにのまがたま:三種の神器のひとつ)
を作らせました。
次に、
アメノコヤネ(中臣の連らの祖先)とフトダマ(忌部(イミベ)の首(オビト)らの祖先)
を呼んで、
天の香具山(あめのかぐやま:奈良県桜井市にある大和三山のひとつ)の雄鹿の肩の骨を抜き取り、天
の香具山の朱桜(かにわざくら)を取ってきて焼いて占い
祭りの準備をさせました。
そして、
天の香具山の多数の榊を掘り取って
上の枝に八尺の勾玉を緒に貫いた玉飾りを付け
中の枝に八尺の鏡を掛け
下の枝に楮(こうぞ)製の白い幣(ぬさ:布のこと)と麻製の青い幣を垂らし
ました。
フトダマがそれらの品を捧げ物として持ち、
アメノコヤネが天岩戸の中まで響くような高らかな声で祝詞を読み上げました。
アメノタヂカラオ(強い手の力を持つ男神)
が戸の脇に隠れ立ちました。
準備が整ったところで、
アメノウズメ(髪飾りをした巫女の神、猿女の君の祖先)が
天の真析葛(あめのまさかずら:定家葛(テイカズラ)のこと)を髪飾りにして
天の香具山笹の葉を採物(神楽の時、舞人が手にとるもの)に束ねて持ち
天の岩屋戸の前に伏せた桶を踏んで大きな音を響かせて神かがりし
胸の乳房を露出させ
裳(も)の紐を陰部までたらし踊り狂った
のです。
すると、高天原が鳴動するほどに八百万の神がどっと笑いました。
その様子を、天の岩屋戸に籠もったアマテラスが、不思議に思い・・
さてさて・・・・天の岩戸の外はなにやら騒がしいではありませんか!!
アマテラスは心穏やかではありません。
ついに、その騒ぎに引き寄せられるように天岩戸の扉をそっと細めに開けて外の様子を見てみました。
すると、どうでしょう!!
信じがたい光景がアマテラスの目に飛び込んできました。
なんと楽しそうにお祭りをしているではありませんか。
不思議に思ったアマテラスは、激しく踊り狂っているアメノウズメに声をかけました。
「私が籠もっていて、天の原も葦原の中つ国も真っ暗になり
世の中の神々はみなさぞ恐れおののいているだろうと思っていたのに
なぜお前は踊り狂い
八百万の神々は楽しそうにみな笑っい転げているのか?
いったい何があったというのだ?!」
すると、アメノウズメは、
「はい、実はあなた様に勝る貴い神が出でましになられたので、
みなそれを祝し、喜んで笑って歌舞をしているのです。」
と答えました。
そして、アメノコヤネとフトダマが八尺の鏡をアマテラスに向けたのです。
その鏡に映ったのは、当然アマテラス自身の姿です。
ところが、アマテラスは、鏡に映った自分の姿を見ても自分だと気付かず、
「あの神が、その私よりも貴い神なのか?」
と思いました。
そして、
「ここからではよく見えない。もう少し外に出て、鏡を覗いてみよう」
と思い、少しずつ戸から出て行きました。
しめしめ、作戦とおりにアマテラスが出てきました!!
そこに脇に隠れ立っていた怪力のアメノタジカラオが、アマテラスの手取って、力任せに岩屋の外へ引き出したのです。
そして、すかさずフトダマが用意していた注連縄(しめなわ)をそのアマテラスの後方に手早く張りめぐらし、
「もはや、この注連縄から中にお入りになることはできません。もう、ここから内に戻ることはできませんぞ」
と宣言しました。
こうしてアマテラスが出ると、太陽が輝き始め、高天原と葦原中つ国はすっかりと明るさを取り戻したのです。
・・・ところで・・・
この事件を引き起こした張本人であるスサノオはどうなったのでしょうか?
八百万の神々は、スサノオの処分について話し合いました。
その結果、スサノオは
贖罪(しょくざい)のためにたくさんの貢物を奉納させ、
髪と手足の爪を切らせ
高天原から追放する
ことにしたのです。
貢物を奉納したり、髪や爪を切るのは刑罰の1つであり
古代社会では、そうすることによって罪や穢れが払い清められると考えられていたのです。