4月のある日・・・・
源九郎稲荷神社の社殿の前に置かれた長いすに、長い間おばあちゃんが座っていました。
何度かお見かけしたおばあちゃんなのですが、とても、淋しそうに見えたので、中川のおばちゃんが声をかけて社務所にお連れしました。
おばあちゃんは、何度も
と私達に頭を下げました。
お茶とお茶菓子を出したところ、
と言って手を合わせる姿を見ていると、おばちゃんは。とても心に淋しさを持った方だと思いました。
それで、色々と話を聞いていると、
おばあちゃんのお年は80歳を超えておられ、お一人で暮らしているとのことでした。
色々と事情があられ、とても淋しい思いをされていました。
また、時々、ディサービスで老人ホーム等に連れて行ってもらうそうですが、目が少し不自由なので、みんなが楽しむ趣味も同じように楽しめず、あまり行きたくない
とのことでした。
源九郎稲荷神社には、昔から時々訪ねてきてくださっていたようですが、
昔は、こんなに綺麗じゃなかったよね
とおっしゃってくれました。
お近くに住んでおられるとのことでしたので、
と言ったら、
とおっしゃるのです。
私達は、
来てくださったら神様が喜びます。
子供たちも毎日学校帰りに寄ってくれますよ。
って言うと、
そう言って、おばあちゃんは、何度も何度も頭を下げて帰っていかれました。
誰かにとっての拠り所となれる神社・・・
それが私が描いている理想の神社です。
おばあちゃんが、これからも気軽に立ち寄ってくださることを、心から願っていたのですが、それ以降おばあちゃんの姿を見ることはありませんでした。
そして月日が流れ・・・・11月に神社でお火焚祭が開催された日、おばあちゃんが神社に姿を見せてくださったのです。
あれから帰ったら、痛かった足がようなって助かりました。
源九郎さんのお陰です。
でも今日また、久々に足が痛うなって、また源九郎さんに、足を治してくださるようにお願いに来ましたんや。
そしたら、お祭りがやってるやありませんか。
びっくりしましたわ。
と言うのです。
それで、
是非護摩木にお願いごとを書いてください
と言ったところ、
足が痛くなったんは、源九郎さんが、私にお祭りを見せてくださるためにお呼びくださったんやねぇ。
ありがたいことですわ。
とおばあちゃんは大喜びでした。
その後、字が書けないというおばあちゃんの代わりに、足の痛みがとれますようにとお願い事を護摩木に書いてあげました。
おばあちゃんは、しばらくその護摩木を握り締めていました。
おばあちゃんの言う通り、源九郎さんがおばあちゃんをお呼びしたのだと思います。
神様のこういった心遣いがうれしくて、とても心が温かくなりました。
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