中村勘九郎・市川猿之助が支えた源九郎稲荷神社
歌舞伎「義経千本桜」に登場する源九郎狐ゆかりの地として、中村勘九郎丈・市川猿之助丈が源九郎稲荷神社を応援。
参拝エピソード、寄付、講演での支援、復興への大きな後押しとなった秘話をご紹介します。
六代目中村勘九郎さん襲名祈祷プロジェクトの開始

源九郎稲荷神社には、歌舞伎との“深いつながり”があります。
そのご縁を象徴する出来事が、2012年、大和郡山市地域振興課より届いた一本の連絡でした。
それは――
「市主催で、六代目中村勘九郎さんを源九郎稲荷神社へ正式にご招待する」
という歴史的なプロジェクトでした。
源九郎狐(源九郎稲荷神社の名前の由来となった白狐)は、
歌舞伎の名作 『義経千本桜 四ノ切』 の主人公としても登場します。
ちょうどこの頃、六代目勘九郎丈は襲名したばかり。
襲名披露公演でも源九郎狐を演じることが決まっており、神社とのご縁はまさに運命的でした。
そして 2012年9月26日。ついに六代目中村勘九郎丈が源九郎稲荷神社へ参拝。
当時は宮司不在だったため、隣接する郡山薬八幡宮の宮司さまにお越しいただき、正式なご祈祷を執り行いました。
参拝後は大和郡山城ホールへ移動し、
南小学校の子どもたちと「源九郎小唄」に合わせて白狐の舞を披露。
子どもたちとの温かい交流は地域にとって大きな宝物となり、
この市長の粋な計らいのおかげで、全国の歌舞伎ファンが神社を訪れるようになりました。
さらに、源九郎稲荷神社にはもうひとつの大きなご縁があります。
源九郎狐を演じたら右に出る者はいない――
三代目市川猿之助さん(現・猿翁さん)も、神社へ参拝されているのです。
歌舞伎史を代表する名役者たちと深くつながる源九郎稲荷神社。
まさに、
「義経千本桜の聖地」
「源九郎狐ゆかりの地」
と呼ぶにふさわしい特別な場所なのです。
歌舞伎ファンの皆さまも、歴史ファンの皆さまも、
ぜひ一度この不思議なご縁が息づく源九郎稲荷神社へお越しください。
そして、2012年9月26日に、六代目中村勘九郎さんが神社にお越しくださいました。宮司さんのいない当神社では、お隣の郡山薬八幡宮の宮司さんにお越しいただき、ご祈祷を執り行っていただきました。その時の様子が下の写真です。
また、中村勘九郎さんは、参拝の後大和郡山城ホールへと移動し、大和郡山南小学校の子供達と源九郎小唄に乗せて白狐の踊りを一緒に踊ってくださる等子供達との交流を図ってくださいました。この市長さんの粋な計らいのお陰で、全国の歌舞伎ファンが神社に足を運んでくださるようになりました。
四代目市川猿之助さんの水木十五堂賞授賞式
源九郎稲荷神社が大きく注目されるきっかけとなったのは、六代目中村勘九郎丈のご参拝でした。
ちょうどその同じ年、四代目市川猿之助丈が襲名。歌舞伎界にとって特別な一年でした。
勘九郎丈の参拝をきっかけに、神社には歌舞伎ファンの参拝客が増えました。
そして、皆さん口をそろえてこう尋ねられました。
「市川猿之助さんは来られないの? 源九郎狐といえば澤瀉屋の十八番でしょう?」
その声を聞いた源九郎とよ(私)は、思い切って猿之助丈にお手紙を書きました。
「いつか機会があれば、ぜひ当神社へ」と。
すると——なんと!!
猿之助丈ご本人から神社にお電話をいただき、翌年2月、お忍びでご参拝くださったのです。
勘九郎丈もとても気持ちの良い好青年でしたが、猿之助丈もまた礼節を重んじる素晴らしい方で、スタッフ一同心から感激しました。
■ 大和郡山市からの思いがけない“贈り物”
それから間もなく、大和郡山市がとても素敵なプレゼントをくださいました。
第3回「水木十五堂賞」に市川猿之助丈を選出されたのです。
自治体レベルの賞には、本人が出席しないことが一般的と言われています。
しかし——猿之助丈は自ら大和郡山市へ足を運んでくださり、私たちにもお話しする時間を作ってくださったのです。
ほんの10分ほどでしたが、猿之助丈は神社について次々と質問を投げかけ、真剣に耳を傾けてくださいました。
そして受賞講演の場で語られたのは——
賞のことではなく、
最初から最後まで “源九郎稲荷神社の復興” について。
会場にいた住民の方々へ、
「この講演が終わったら、ぜひ神社にお参りしてください。
お賽銭は1000円以上お願いしますね(笑)」
と、ユーモアを交えながら神社の応援を呼びかけてくださいました。
さらに、その中で語られた言葉が忘れられません。
「どこかのスポンサーが大金を出して神社を建て直すのは簡単です。
けれど、それではいけないのです。
“みんなの手で復興させてこそ” 意味があるのです。」
この考え方は、私たち復興チームがずっと大切にしてきた信念そのもの。
鳥肌が立つほど嬉しい瞬間でした。
■ 猿之助丈の言葉が “奇跡” を起こした
猿之助丈の講演は大きな反響を呼び、講演終了後の神社は参拝客で溢れかえるほどに。
その後も口コミが広がり、参拝客は日に日に増え続けました。
大和郡山市長様も、
「次は勘九郎さんか猿之助さんに、郡山で歌舞伎を演じてもらわないといけませんね」
と笑顔でお話ししてくださいました。
さらに驚くべきことに——
猿之助丈は受賞の副賞 50万円 を神社へ寄付してくださいました。
加えて、神事の際に使う垂れ幕までご寄付くださり、
その後も何度も“お忍び”で神社に参拝に来てくださっています。
もしかしたら、あなたが源九郎稲荷神社を訪れたとき——
ひょっとすると本当に、鈴の音とともに現れる猿之助丈に出会えるかもしれません。

授賞式の日に楽屋で猿之助さんとお会いすることができました。一度もお会いしたことがないのに、「土井さん!」と言ってくださったのには驚きました。なんと、手紙を書いてことを覚えてくださっていたのです!!(猿之助丈、中川奥様、岩岸住職奥様、とよ、岩岸住職)

写真は猿之助さんが寄付してくださった神事の際に掛ける垂れ幕です。